特定生殖補助医療法律案について ―AID実施機関の立場から―

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6月5日(水)参議院自民党政策審議会では、宮崎雅夫 政審副会長の司会の下、
「特定生殖補助医療法律案について ―AID実施機関の立場から―」と題し、
生殖補助医療に関する制度設計について、有識者ヒアリングを実施しました。

古川俊治 参議院議員の紹介で、
 ・田中 守 慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室教授・産科診療科部長
より、下記のようなお話をいただきました。

  • 慶應義塾大学病院では民間病院ながらAIDのニーズの半分近くを埋めてきた。しかし限度もあり、やはり公的な制度設計がなければ、安定的な医療提供が難しい。 
  • 特定生殖補助医療として、①精子提供、②卵子提供、③代理懐胎がある。今回はまず、このうちの➀・➁に対応するたたき台を作っていただきたい。
  • ➀精子提供は比較的簡便なのでネットを通じたアンダーグラウンドの提供が横行し、慶大病院のAIDのような感染症検査等を行うものと異なり、質が保たれていない。
  • ②卵子提供は過排卵注射を行う仕組みになるが、日本ではしっかりした仕組みがないので、希望する女性が海外で高額の金銭を支払い提供を受けているのが現状だ。
  • ③代理懐胎は代理母に受精卵を妊娠・出産してもらう方法だが、「法律上の母」を誰(希望した母、卵子を提供した母、出産した母)にするのか等、複雑な問題がある。
  • 優生思想の排除・個人のプライバシー問題と、子供の側の「出自を知る権利」とのバランスが難しい。海外は「出自を知る権利」を重視した法整備が進んでいるが、非匿名性が提供者の集まりを悪くさせることが、慶大病院のドナー予約数の推移からもわかっている。
  • イメージとしては、①精子提供は日赤の献血システム(匿名ドナー・非匿名ドナーを選択可能)、②卵子提供は骨髄バンクのような登録形式といったボランティアベースで進めていくのがよいのではないだろうか。

説明後、小野田紀美 議員、山東昭子 議員、山田太郎 議員から質疑がありました。

  • 卵子提供は加齢による劣化から、ドナーに年齢制限がある。ベースとなる知識を広報し、理解を広げていく必要があるだろう。
  • 英国の国立精子バンクが破綻した原因は何か。日本が公的制度設計をするにあたり、破綻しない為に必要なことはあるか。
  • 精子提供の相手先は通常男女のカップルが想定されているが、「出会いがない」だけで子供は欲しい、独身・高収入女性のニーズにも応えられるようにしてはどうか。
  • 父と母は恋愛結婚だったが、「かっこいい」「かしこい」等をパートナーに求める選り好みはあった。優生思想と批判されても、一定程度は精子提供・卵子提供にも特性の選択権を与えてはどうか。
  • 所謂人工子宮で、ロボットが子供を産む時代が来ると発言している技術者がいたが、既に可能なのか。
  • 選択式で導入、というお話があったが、募集する側としてはやはり匿名ドナーのほうが提供を求めやすいのか。
  • 出自情報の管理はどこがやるのか。 (一社)ベビーライフ事件もあったが、公的機関(仮称:成育医療研究センター)が管理できるのか。